京峰石だより(blog)
香りが残すもの──焙じ茶と山城のこと。京ほうじ(京峰路)ができるまで②
「京ほうじ(京峰路)」という名前には、
「京都の峰から都へと続く香りの道」という思いを込めました。
その香りの正体──それが、ほうじ茶です。
■ 山城のこと。ほうじ茶のこと。
京都南部、山城。
この地は、言わずと知れたお茶のふるさとです。
宇治茶、抹茶、煎茶。
いずれも、山城なくして語れません。
そして近年では、ほうじ茶もまた、静かに評価を高めています。
ただ、ほうじ茶そのものの歴史には、はっきりした文献があまり残っていません。
なぜなら──それはきっと、特別なことじゃなかったから。
「売れなかった茶を焙じて、自分たちで飲む」
「香りがよくなった。なら、これも売ってみようか」
きっとそんな、日常の中の自然な流れだったんだろうと思うのです。
■ 都の近く、記録の外
山城が発祥と言われるのも、おそらく都に近かったから。
流通も、文化も、言葉も、
都に近ければ自然と形になるし、残る。
けれど、実際にその香りを焙じていたのは、記録に残らない人たちだったのではないでしょうか。
日々の暮らしの中で、
ただ「美味しくしよう」と工夫した人たち。
そんな姿に、私は惹かれます。
■ 香りは、記録よりも残る。
焙じ茶の香りって、不思議です。
強く主張するわけでもないのに、
ふとした時に、誰かの記憶にすっと入り込む。
その香りを、私たちはチーズテリーヌというかたちで閉じ込めました。
「京峰路」は、そんな日常の工夫と香りへの敬意から生まれた一品です。
■ 最後に
京都には、「書き留められなかった美意識」がたくさんあります。
そのひとつが、ほうじ茶という香りの文化かもしれません。
「京峰路」は、記録に残らなかった人たちの知恵と、
記憶に残る香りを、静かに形にしたスイーツです。
よろしければ、あなたの時間にも、香りのひとときを。