京峰石だより(blog)
抹茶とほうじ茶、並び立つ京の香り──選ばれ続ける理由。
京都の甘味処や茶寮を訪れると、こんな光景によく出会います。
抹茶と、ほうじ茶。
メニューにも売り場にも、ほぼ例外なく、この二つが並んでいます。
これには、単なる偶然ではない、**消費者の「選び続けている事実」**が隠されています。
■ 抹茶──格式と静寂の象徴
千利休の時代から茶道の中心を担い、
宇治の茶園で育まれてきた、京都を代表する茶の頂点。
その濃厚な旨味、深い緑、そして静かな緊張感。
抹茶は、まさに「美意識を飲む」ような体験を与えてくれます。
今や世界中で知られ、抹茶スイーツは王道・不動の人気ジャンルです。
■ ほうじ茶──静かな逆転、香りの魅力
一方で、ほうじ茶はもともと「日常茶」でした。
番茶や茎茶を焙じて香ばしく飲みやすくした、いわば家庭の工夫。
けれど近年、香りを楽しむスイーツ・ドリンクが台頭する中で、
ほうじ茶は“香りの主役”として再評価されてきました。
特に京都発の焙じ茶ラテや焙じ茶スイーツは、今やどこに行っても見かける存在です。
■ 並んでいるのは、売れているから。
大事なのはここです。
メニューに載っている=売れているから。
お店は、売れないものは外します。
でも抹茶とほうじ茶は、ずっと並び続けている。
つまり、それだけお客様が選んでいる・求めているということです。
格式の抹茶と、香りのほうじ茶。
まるで、京の町にある大小ふたつの寺のように、対ではなく共存の美がそこにあります。
■ 京都だから、香りにも意味がある。
京都は、“味”より“余韻”を大切にする土地。
料理でも、和菓子でも、強さよりも奥行きを重んじます。
そんな文化の中で、焙じ茶という香りのスイーツが育ってきたのは、ごく自然な流れです。
強く主張せず、それでも忘れられない香り。
それが、ほうじ茶の魅力であり、**京都人の感性に合った「静かなる価値」**です。
■ 最後に──「並ぶこと」に意味がある。
抹茶とほうじ茶は、片方だけでは成り立ちません。
どちらかがあって、どちらかがある。
まるで金と銀、月と影のように──互いを引き立て、支え合っている。
あなたの手元にも、ぜひこの京の香りの二重奏を。
抹茶の深みと、ほうじ茶の香り。
どちらも、選ばれ続ける味です。