京峰石だより(blog)

チーズテリーヌ嵯峨に使っている、柚子の話。

チーズテリーヌ嵯峨に使っている、柚子の話。

京峰石の「チーズテリーヌ嵯峨」には、
京都・水尾で育った実生(みしょう)の柚子を使用しています。

実生柚子とは、接ぎ木ではなく、
種から育ち、世代を重ねてきた柚子のこと。

水尾では、この実生柚子がかなり古くから受け継がれてきました。


水尾という場所

水尾は、嵯峨嵐山からさらに奥へ進んだ山あいにあります。

冬は冷え込み、霧が立ち、昼夜の寒暖差も大きい。
水尾は、柚子の主要産地とは異なる環境にあります。

それでも水尾では、
柚子が「香りを蓄える」ように、ゆっくりと育ちます。

水分が多すぎず、
一気に大きくならない分、
香りが鋭く、芯のある柚子になる。

これが、水尾の実生柚子の大きな特徴です。


実生柚子という、時間のかかる柚子

実生柚子は、育てるのに時間がかかります。

実がなるまでに年数が必要で、
形も大きさも、毎年そろいません。

効率だけを考えれば、
正直、扱いやすい柚子とは言えません。

それでも水尾では、
「昔からこうやってきたから」と、
実生柚子が育て続けられてきました。

理由はシンプルです。
香りが、まったく違うから。


チーズに合わせるための柚子

京峰石のチーズテリーヌ嵯峨は、
柚子を主役にしたお菓子ではありません。

甘さを前に出すためでも、
分かりやすい柚子味にするためでもない。

チーズのコクの中に、
一瞬、すっと立ち上がる香りとして柚子を使っています。

水尾の実生柚子は、
果汁の酸味よりも、皮と香りに個性があります。

だからこそ、
チーズと合わせても負けない。

強すぎず、
でも確実に印象を残す。

その役割に、この柚子が合っていました。


「京都らしい」という言葉の中身

京都らしい、という言葉は便利ですが、
京峰石が大切にしているのは派手さではありません。

時間がかかること
効率がよくないこと
説明しないと伝わらないこと

そういうものが、
結果として味に残る。

水尾の実生柚子は、
まさにその象徴のような素材です。


最後に

チーズテリーヌ嵯峨を食べたとき、
「柚子が入っている」と強く感じなくても構いません。

ただ、
後味に少しだけ、空気が変わる。

その感覚があれば、
それが水尾の実生柚子の仕事です。

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